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       たけいはいじとうあと / たけいこふんぐん
国指定史跡
 武井廃寺塔跡 / 武井古墳群

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武井古墳群中の一基

八角形墳の武井廃寺塔跡や截石切組積の精巧な石室をもつ中塚古墳を中心に旧新里村の武井地区の9基から成る古墳群 。


八角形墳の火葬墓と判明

現在、「武井廃寺塔跡」との名称で国の史跡に指定されているが、根拠とされた塔の心礎(心柱を支える礎石)のような石造物が一つしか発見されず、また地形も寺院にしては不自然であることから 、かねてより疑問視されていた。

1969年(昭和44年)に調査により、八角形三段の石積の墳丘が発見され、基壇の形状が畿内にみられる八角形墳と酷似しており、また、石造物が周辺地域より出土する石製骨蔵器に酷似していることなどから、奈良時代の火葬墳墓と推定されている 。


古代の寺院跡として国の史跡に

土を盛って作られた基壇上にある円錐状の加工石が塔の心礎であると看做され、また、周辺より奈良時代の瓦が出土したこともあり、この地に古代の寺院があったと考えられ、「武井廃寺跡」として昭和16年に国の史跡に指定された 。

寺院跡ではなく、八角形墳と判明してから50年たった現在もなお、国の指定はそのままで、名称も「廃寺塔跡」のままである。

「国指定文化財等データベース」
より指定基準と詳細


〜指定基準〜

三.社寺の跡又は旧境内その他祭祀信仰に関する遺跡


〜詳細〜

俗ニ松原峯トスル丘陵上ニ在リテ土壇及心礎ヲ存セリ心礎ハ原位置ニ存シ長徑約六尺一寸、短徑約四尺六寸ニシテ表面ニ高サ六寸ノ圓形造出シヲ施シ中央ニ徑一尺三寸六分、深サ一尺四寸八分五厘ノ孔ヲ刻セリ土壇ノ附近ヨリ奈良時代ノ樣式ヲ示ス遺瓦發見セラル


被葬者は新川臣?

八角形墳は畿内では大王墓だが 、群馬ではどのような意味があるのか。

宗教的なものか、あるいは大王に匹敵するの権力者がいたのか。

いずれにしても、この地の支配者であった新川臣と深い関係があったと思われ、一族の有力者の墳墓だったと推定できる。
 



▲南側から

南側は公園となっている


▲「史跡 武井廃寺塔跡」の石碑

未だに「古墳」とは訂正されていない
 

▲八角形の135度の稜角

三段の石積みの墳丘は
良く分からない


▲火葬した骨を入れる骨臓器?

発掘調査されたが、これ以外の
遺構はなしとのこと


▲西側から

「八五郎稲荷大明神」の鳥居

▲墳丘の西側

南向きに鎮座する
「八五郎稲荷大明神」のお社
 

▲東側から

▲南側の空き地の石
武井2号墳または別の古墳跡?


▲南側に忠魂碑
 

▲武井古墳群分布図
群馬県古墳総覧を参考に作成





▲上図を見れば、八角墳と
多角円墳、多角方墳などの
違いが一目瞭然で分かる

八角墳は全国で7基のみ?

明日香村教育委員会による「明日香村文化財調査研究紀要」(2015年)の中の「八角墳の再検討」の項目を見ると、八角墳の可能性が指摘されていた25基について、再検討した結果、八角墳と認められるのは、下記の7基のみであるということだ 。

京都に1基 御廟野古墳、
奈良に4基 段ノ塚古墳、野口王墓古墳、牽牛子塚古墳、中野山古墳、
群馬に2基 三津屋古墳武井廃寺古墳

奈良、京都にある5基については、大王墓であると考えられるが、群馬にある2基については大王墓とは考えにくい。

奈良、京都以外では、群馬の2基のみであり、(東京、埼玉、山梨、三重でも八角墳とされていた古墳があるが、いずれも否定されている)この東国において、どのような思想の元で造営されたのか、興味深い 。

なお、群馬県では他に伊勢塚古墳【群馬県藤岡市】一本杉古墳【群馬県多野郡吉井町】も八角形墳の可能性が指摘されていたが、それぞれ、計画的にプランされた八角形とは言えず、多角方墳、多角円墳であるとのこと 。

所在地 群馬県桐生市新里町武井字松原峯598 (旧勢多郡新里村) アクセス
駐車場
 
桐生市(旧新里村)の古墳地図
史跡指定 国指定史跡
1941年(昭和16年)1月27日指定
築造年代 奈良時代
形状 八角形墳(三段の石積み)
一辺:約7.8m
埋葬施設 下位直径:123cm、上面直径:105cm 高さ:17.5cm
中央の丸底状の穴 直径:43cm 深さ:44cm
出土品  
周辺施設  
発掘 1969年(昭和44年)
1992年(平成4年)
参考資料    

探検日(写真撮影日)  2019年03月15日
最新データ更新日  2019年06月29日

【参考文献】
群馬県古墳総覧〈2017〉本文・一覧表編/古墳分布図編
□「古墳めぐりハンドブック」群馬県立博物館
群馬の遺跡〈4〉古墳時代1―古墳
東アジアに翔る上毛野の首長 綿貫観音山古墳 (シリーズ「遺跡を学ぶ」119)
スソアキコのひとり古墳部 (コミックエッセイの森)
東国大豪族の威勢・大室古墳群 群馬 (シリーズ「遺跡を学ぶ」)
関東古墳探訪ベストガイド
関東・甲信越古代遺跡ガイド
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東国古墳時代の研究

著者:右島和夫
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サイズ:単行本/394p
発行年月:1994年05月
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【目次】
第1章 保渡田古墳群の研究/第2章 上野における群集墳の成立/第3章 上野の初期横穴式石室の研究/第4章 上野における横穴式石室の変遷/第5章 角閃石安山岩削石積石室の成立とその背景/第6章 総社古墳群の研究/第7章 截石切組積石室の研究/第8章 古墳からみた5、6世紀の上野地域/第9章 古墳からみた6、7世紀の上野地域
群馬の遺跡(4)

著者:群馬県埋蔵文化財調査事業団
出版社:上毛新聞社
サイズ:単行本/177p
発行年月:2004年11月
税込 1,300 円

【目次】
第1章 古墳時代の群馬は元気だった―群馬古墳学入門/第2章 豪族居館の発見/第3章 埴輪と古墳と古墳時代/第4章 巨石横穴式石室と豪華な副葬品―綿貫観音山古墳とその被葬者/第5章 多田山の唐三彩が語る歴史/第6章 群馬における古墳研究の歩み―『発墳暦』から観音山古墳・三ツ寺1遺跡まで/学習へのいざない
群馬の遺跡(5)

出版社:上毛新聞社
発売日:2005/01/01
サイズ/ページ:21cm/
定価:1,301 円

目次:
第1章 こうして古墳時代は始まった
第2章 黒井峯遺跡の発見
第3章 水田と畠
第4章 炉からカマドへ、農民たちの生活
第5章 群馬県の古墳時代集落研究のあゆみ―入野遺跡から黒井峯遺跡まで
学習へのいざない

 

 

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