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【種類】
横穴墓群
【規模】
現在、219個の横穴墓が存在している。
【築造年代】
7世紀初頭
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↑↓説明看板
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「百穴」の名が文献に見られるのは今から200年くらい前で、江戸時代の中頃には「百穴」の呼び名で不思議な穴として興味を持たれていたようだ。 明治20年、坪井正五郎博士による大発掘が行われその結果、人骨・玉類・金属器・土器等が掘り出され横穴の性格を土蜘蛛人(コロポックル人)の住居でありのちに墓穴として利用されたものであるとされた。
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↑武蔵国比企郡西吉見村百穴の記
売店(発掘の家)で30円で販売していた。 |
坪井正五郎博士→
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しかし、大正末期に入って考古学の発展により各地で横穴の発見発掘の結果、その出土品、横穴の構造から横穴が古墳時代の後期に死者を埋葬する墓穴として掘られたものであることが明らかにされ『住居説』がくつがえされた。 |
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【薄葬令】
西暦646年に、中央政権によって、葬送の儀式に関係した「薄葬令」が出された。
「薄葬」とは「簡単に葬ること」で、地方豪族の権力の象徴と言える古墳の造営を禁止した法律。この横穴墓群はそうした背景があって作られるようになったものか。
【穴の並び方】
斜面に並ぶ穴は西側から東側へ行くにつれて、その並び方が整い、特に東側にある穴は平行線上に正しく配置されて整然としている。
穴の掘り方の技術や考え方が進んだと考えられる。
また下方の穴より、上位の穴の方が大きくなり、穴と穴の間隔が広くてゆとりがある。
中位の穴は2,3の大きく立派な穴が取り巻いてその周辺に小さな穴がいくつか掘られ一つの小グループをつくっている。
この穴の並び方やまた上中下に位置の違いは、穴が掘られた年代の違いを示すものか、また葬られた人の身分や富とつながりがあるものか。
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説明看板→
穴の並び方、棺座の工夫、
玄室の形、横穴の構造 |
↑玄室には遺体を安置する棺座が複数あり、複数の人間を葬ったものと思われる。これは2つあるタイプ。 |
【埋葬施設 】
・横穴墓
・玄室と羨道からなる。
・玄室の天井は屋根形
・壁際には10〜20cm程の棺座が作られている(遺体の安置場所)
・入り口部分には緑泥片岩の蓋
【死生観】
古墳時代の人々は人が死ぬことは決してなくなってしまうことなどではなく、現世を旅立って遠いところへゆくのだ、そしてそこで今までのような生活を続けると考えていた。
この考え方が横穴の構造に表れて、玄室つまり現世から羨道を通って「あの世」へ行った、死者が現世と同じような生活をしているところとしての意味をもっている。
<横穴を掘った人々>
岩山の上から西の方を眺めると市野川の広い沖積地をへだてた対岸、平坦な柏崎の台地上に、古墳時代後期の住居跡が発見されている。
また、西側にひらけた、自然堤防からも6,7世紀の住居跡がたくさん見つかっている。
いずれも「吉見百穴」を造った人々と関係のある住居跡と推定される。
<横穴を掘った工具>
玄室の天井や側壁の片隅に、横穴を掘った工具の跡が見られる。
鋭い削り跡はたぶんのみ類で、幅広な削り跡は手本か、中には釘のように細い用いて整形した跡がみうけられる。
横穴が掘られた場所は凝灰岩質の比較的軟らかい岩山だが、粗末な工具では一つの横穴を掘るにも大変な労力が必要であり、おそらく数人の者がこつこつ掘り続けて完成するまでに十数日を要したのではないか。
<横穴に葬られた人々>
古墳時代の村人達の中で横穴を造ってここに葬られた人は一部の人に限られていたと考えられる。村人の中でも数人の働き手を十数日も横穴を掘る労働に使役させることのできた一部の人々が自ら奥津城として横穴を造らせ、その家族とともにこの中に葬られたものであろう。
横穴には棺台が2つも、3つもあることから、一人の墓ではなく有力者の家族の墓でもあったと考えられる。
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説明看板→
玄室の形
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↑緑泥片岩の蓋が立てかけられていた。何度も追葬を行うためのようだ。 |
↑売店「発掘の家」の一角に展示してある |
【出土遺物】
金環・勾玉・管玉・埴輪(飾馬)・土器など。
亡骸を葬るとき、その人が生前に使っていたものなど死体に添えたらしい。 |
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↑説明看板
中は夏は涼しく、冬は暖かい→ |
<地下軍需工場跡>
戦時中、横穴墓群のある岩山に地下工場建設が行われ数十基の横穴がこわさたが、戦後、吉見百穴保存会の結成により積極的な保存、管理がなされ、その後、昭和36年吉見町に移管された。
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<吉見百穴ひかりごけ発生地>
国指定天然記念物 昭和3年11月30日
ヒカリゴケはコケ類の一種であり、緑色の光を放出しているように見えるところから、この名がついている。ヒカリゴケの生育には、一定の気温と湿度を保つ環境に恵まれることが必要で、この条件に合った吉見百穴の横穴墓内にはヒカリゴケが自生している。
←明るいと良く分からないが、うっすらと光っている。 |