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よろいをきたこふんじん くびかざりのこふんじん
「甲を着た古墳人」「首飾りの古墳人」
群馬県埋蔵文化財調査センター
 

※写真は全てクリックで拡大します※


金井遺跡群

金井遺跡群とは、群馬県渋川市の金井地内に所在する金井東裏遺跡金井下新田(しもしんでん)遺跡の総称で、 古墳時代の重要な遺構、遺物が見つかったことで注目され、「日本のポンペイ」と呼ばれることもある。

北側の金井東裏遺跡からは、国内初の甲を着たまま埋まっていた人骨「甲(よろい)を着た古墳人」が発見され、「奇跡の発掘」と言われる。
金井東裏遺跡/金井遺跡群の詳細はこちら

発掘された人骨のうち、状態の良かった2体の実物大レプリカが群馬県埋蔵文化財調査センターに展示されている。


被災した古墳人の骨の発見

金井東裏遺跡は南北600mほどの細長い区域を13区画に分けて発掘調査され、そのうち、中央付近の4区から、「甲を着た古墳人」を含む4人の人骨が発見された。

・1号人骨 「甲を着た古墳人」
 40代男性 163cm 渡来系 (推定)
 
・2号人骨 頭骨の一部
 数か月の乳児 性別不明 

・3号人骨  「首飾りの古墳人」 
 30代女性 143cm 東日本系 (推定)

・4号人骨 頭蓋骨、踵の一部
 5歳前後の幼児 唯一の群馬育ち?

幼児と乳児の骨はごく一部しか残存しておらず、成人男女との関係は不明であり、成人男女は少なくとも兄弟関係はないという。

酸性土壌で多雨な場所では骨が分解されてしまい、墓への埋葬以外で人骨が見つかることはまず考えられないということである。

さらに、イタリアのポンペイでも、被災者の姿は空洞で残っていても、中に骨や肉は残存しておらず、火砕流の中から人骨が見つかるというのは、特別な条件が重なって起こった奇跡といえるだろう。

この4区からは4人分のみであるが、他の区画からも人骨や馬の骨が見つかっており、実際はもっと多くの人間が、この場所で被災していたかもしれない。
 

有力なリーダー?

「甲を着た古墳人」は、当時の最先端技術で作られた甲と冑を身につけており、さらに、周囲から2号甲(小札甲・こざねよろい)、鉄鉾、25本の矢が入った靭(矢入れ具)なども発見されており、彼の持ち物と考えられている。

それらは、かなりの有力者でないと入手できないものであり、副葬品のレベルで言えば、100m級の前方後円墳で、保渡田古墳群の被葬者クラスだという。

それだけの有力者なら、お宝をもって、馬に乗って、さっさと安全な場所に避難できたと思うが、彼は火砕流に背を向けるのではなく、正面を向いて倒れていた。

山の神、火砕流に立ち向かうとしていたのか、ムラの人々、一緒に発見された女性や子供達を避難させようとしていたのか。

彼は最後の最後までムラに踏みとどまり、ムラを守ろうとした立派なリーダーだったのかもしれない。

なお、成人の男女は様々な調査の結果、長野の伊那地方から、この群馬にやってきた可能性があるという。

ヤマト王権の馬の繁殖や飼育などといった重要な役割を帯びていたのかもしれない。
 



▲1号人骨 「甲を着た古墳人」
実物大のレプリカ

横から。人骨がわかりやすい
ように甲は持ち上げて展示
 


▲1号人骨 「甲を着た古墳人」
実物大のレプリカ

後ろ、足元の方から。
頭は榛名山の方角に向いていた

▲3号人骨 「首飾りの古墳人」

横から
 

▲3号人骨 「首飾りの古墳人」

後ろ、足元の方から

▲「甲を着た古墳人」解説板
 

▲「首飾りの古墳人」解説板
 

▲「甲を着た古墳人」の
頭蓋骨と全身骨格
 

▲「首飾りの古墳人」の
頭蓋骨と全身骨格

▲「甲を着た古墳人」と
「首飾りの古墳人」の複顔

渡来系と東日本系で、
顔立ちがだいぶ違うようだ

▲甲を着たぐんまちゃん

金井東裏遺跡の調査結果から
「甲を着た古墳人」の着けていた
甲と冑に変更したバージョン
 

▲金井東裏遺跡 調査区域

写真左が人骨が確認された4区
 

▲金井東裏遺跡 4区

人骨、武具が発掘された状況
 
所在地 〒377-0061 群馬県渋川市北橘町下箱田784−2 埋蔵文化財調査センター 発掘情報館 アクセス
駐車場

渋川市の古墳地図
別名  
形状  
埋葬施設  
出土遺物  
周辺施設  
調査暦   更新履歴

探検日(写真撮影日)  2020年11月06日
最新データ更新日  2020年12月30日

文献  
【参考文献】
□「古墳人、現る 金井東裏遺跡の奇跡
□「自然災害と考古学―災害・復興をぐんまの遺跡から探る
□埋文群馬 特集「奇跡の発掘 金井東裏遺跡のすべて」 群馬県埋蔵文化財調査事業団
□「古墳人だより 1号〜23号」群馬県埋蔵文化財調査事業団
□「群馬県古墳総覧〈2017〉本文・一覧表編/古墳分布図編」群馬県教育委員会事務局文化財保護課
□上毛古墳綜覧〈1938〉
「群馬県遺跡台帳II (西毛編)」
群馬の古墳物語 ―東国の古墳と文化を探る― 下巻 少林山台古墳群
群馬の古墳物語 ―東国の古墳と文化を探る― 上巻
ぐんま古墳探訪―見て学ぶ東国文化の輝き

 


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上州路散歩24コース

著者:群馬県歴史教育者協議会
出版社:山川出版社(千代田区)
サイズ:新書/220p
発行年月:2004年01月
税込 1,470 円

上州路の散歩コースと散歩事典。東国一の古墳文化上毛野、江戸北辺の守り上州、近代化遺産の宝庫群馬、常に時代の先端であった上州の地を訪ねる。
【目次】
第1部 上州路散歩24コース(相沢忠洋ゆかりの地を訪ねる/古墳時代上毛野の豪族をしのぶ/赤城山南麓の古墳群を巡る/上野国府・国分寺周辺を歩く/上野三碑ゆかりの地をたどる/中世新田荘を歩く/上野の名城箕輪城周辺を歩く/白井城と白井宿を歩く/東毛の山城に戦国をしのぶ/上州真田氏ゆかりの地を巡る ほか)/第2部 上州路散歩事典
東国古墳時代の研究

著者:右島和夫
出版社:学生社
サイズ:単行本/394p
発行年月:1994年05月
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【目次】
第1章 保渡田古墳群の研究/第2章 上野における群集墳の成立/第3章 上野の初期横穴式石室の研究/第4章 上野における横穴式石室の変遷/第5章 角閃石安山岩削石積石室の成立とその背景/第6章 総社古墳群の研究/第7章 截石切組積石室の研究/第8章 古墳からみた5、6世紀の上野地域/第9章 古墳からみた6、7世紀の上野地域
群馬の遺跡(4)

著者:群馬県埋蔵文化財調査事業団
出版社:上毛新聞社
サイズ:単行本/177p
発行年月:2004年11月
税込 1,300 円

【目次】
第1章 古墳時代の群馬は元気だった―群馬古墳学入門/第2章 豪族居館の発見/第3章 埴輪と古墳と古墳時代/第4章 巨石横穴式石室と豪華な副葬品―綿貫観音山古墳とその被葬者/第5章 多田山の唐三彩が語る歴史/第6章 群馬における古墳研究の歩み―『発墳暦』から観音山古墳・三ツ寺1遺跡まで/学習へのいざない
群馬の遺跡(5)

出版社:上毛新聞社社
発売日:2005/01/01
サイズ/ページ:21cm/
定価:1,301 円

目次:
第1章 こうして古墳時代は始まった
第2章 黒井峯遺跡の発見
第3章 水田と畠
第4章 炉からカマドへ、農民たちの生活
第5章 群馬県の古墳時代集落研究のあゆみ―入野遺跡から黒井峯遺跡まで
学習へのいざない
 

 

 

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