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【下芝谷ツ古墳】

榛名山の噴火による火砕流や土石流が厚く堆積した下に埋没していたためか、1935年（昭和10年）の群馬県下の古墳の一斉調査では確認されておらず（上毛古墳綜覧〈1938〉） 、1974年（昭和49年）発行の「群馬県遺跡台帳ＩＩ（西毛編）」にも記載がない。

1986年（昭和61年）、県営ほ場整備事業に伴い、発掘調査が行われた。（この時、上部表面がわずかに分かる状態だったという）

1辺20m、高さ4mの2段築成の方墳であるが、下段が盛土で、上段は積石にのみ構築されている。

一般的には、渡来系の積石塚（西毛で5世紀中葉〜6世紀初頭にかけて朝鮮半島出身者と思われる渡来人の墳墓として採用されていた）と言われるが、日本的な盛土、埴輪列と、朝鮮系の積石が組み合わされた、全国的にも稀有な構造をしている。

墳頂の中央部に築かれた竪穴式石室から、全国でも20例ほどしかない金銅製飾履（しょくり・くつかざり）や甲冑類、馬具など朝鮮半島製と思われる豊富な副葬品が出土し、1987（昭和62）年、旧群馬郡箕郷町（現在の高崎市）の史跡に指定された。

【渡来系集団の有力者？】

近接する下芝谷ツ遺跡は数度にわたり調査が行われ、集落跡から朝鮮半島系土器が出土し、古墳や積石塚も確認されており、この谷ツ古墳は渡来系の有力者を葬ったものと考えらている。

ちなみに、群馬県埋蔵文化財調査事業団発行の「甲（よろい）を着た古墳人だより vol.10」によると、金井東裏遺跡から「剣菱形杏葉（けんびしがたぎょうよう）」が出土し、群馬県では他に6例 あると記載されており、その中の1例に下芝谷ツ古墳も含まれている。

（他の5例は高崎市の保渡田古墳群の保渡田八幡塚古墳、井出二子山古墳、下芝谷ツ古墳、天宮古墳（※）、前橋市の大室古墳群の前二子古墳、伊勢崎市の恵下（えげ）古墳）

群馬県で剣菱形杏葉を出土した6基の古墳のうち3基は全長100ｍを超える前方後円墳であり、剣菱形杏葉 を相当な有力者の持ち物だったと考えると、この下芝谷ツ古墳の被葬者もかなりの有力者だったと推測できる。

※天宮古墳は同じ箕郷町で、2kmほど北に所在する古墳と推定される。（真偽確認中）
　

下芝谷ツ古墳は、上毛野はにわの里公園「保渡田古墳群」の西1kmほどのところに所在する。

保渡田古墳群の3基の前方後円墳は連続して造営された 、東国有数の首長墓系列であり、1985年(昭和60年)に、として3基一括して国史跡に指定されている。

一番最初に造られた井出二子山古墳の被葬者は、未開拓であったこの地を開発した始祖的な存在であったと考えられており、朝鮮半島との密接な関係がうかがわれる金銅製品など多数の出土品などから、この地の開拓にも渡来人の技術の貢献があったとされる。

下芝谷ツ古墳は、三ツ寺1遺跡を本拠とした勢力の支配領域にあり、その首長墓群（保渡田古墳群）と同時期に造ら れている。

この地の発展に寄与した渡来系集団の有力者であり、保渡田古墳群の首長 達に次ぐクラスの人物の墳墓と考えられている。
　

日本最古といわれている。
葬送用で、実際には履けない